悟空がまた三年後にと告げた直後、その場にいたブルマ以外が全員、空を見上げた。不思議で奇妙な気を感じたからだ。それは大きなものではなかったが、今まで遭遇した何にも当てはまらない。 間も無く一つの物体が、地上めがけて落ちてきた。場所は、悟空が着陸した場所、つまり彼らが集まる場所からそう遠くない所だった。 大きなクレーターを地上に作ったそれは、悟空が先程乗ってやってきた宇宙船のように丸く、人一人が収まる程度の大きさの物体だった。恐らく、いや十中八九これも宇宙船なのだろう。青い空に向かって煙を立ち上らせている。それは、明らかに危険そうな黒煙だった。 「ちょっと、何よ、あれ。あれもさっきの子が言ってたわけ?」 そうヤムチャの背中から顔を覗かせてブルマが恐る恐るといった風に言う。 「いや、オラはそんなの聞いてねえぞ」 そう答えたのは、悟空だ。ヤードラット星の服を身に纏う彼は、おかしいなと頭をかいた。 ブルマが言っていた、さっきの子というのは、先ほど帰ってしまった未来から来たという少年―トランクス―のことである。今のところ、彼の名を知るのは悟空とピッコロしかいない。なぜ、悟空がおかしいと思ったのかといえば、きっと彼だったらこの事を言い残していった筈だ、と思ったからだ。ピッコロもまたそう思っていた。そして、そうではないというのならば、きっと”歴史”がまた変わっているのだろうとも。 何か物音が聞こえて、しかし、他のものには耳にすることが出来ないその小さな音にピッコロがぴくりと反応する。緑色のその肌はナメック星人特有の肌だ。小さな音も、そして遠く離れた音さえも聞き逃すことなく、その耳にすることが出来るのもまた、彼ら特有のものだった。 「おい、気をつけろ、出てくるぞ」 どんなやつが出てくるのかと、その場の全員が注目する。つい先ほども生き残っていたフリーザとその仲間が来襲してきたばかりだ(と言っても、それは未遂に終わったが)。 しかし、ただベジータだけが、くだらないといった風に、腕を組んでいた。空気が抜ける音がして、その宇宙船だろう物体の入り口と思しき面が持ち上がる。 しかし、矢張りどこか様子がおかしく少しだけ持ち上がっただけで途中で止まってしまった。固唾を呑んで見守っていると、暫くしてバキッと音を立てて、そこの板が軽快に飛ばされた。がらんと地面に落ちたそれは落ちた衝撃か飛ばされた衝撃か、どちらかは分からないが変形している。 「お、おい、今の足…だよな?」 板が飛ばされた瞬間、その穴から伸びて直ぐに引っ込んでしまったそれ。至極当たり前と思われる疑問を、その頭に汗を浮かばせてクリリンが呟く。隣にいた悟飯がこくこくと頷いた。 その直後、にょきっと穴から飛び出てきた、頭。色の白い肌に長くとがった耳、黒い髪にターバンを巻いている。 思わずブルマが短く悲鳴を上げた。 その頭はきょろきょろと辺りを見回すと、悟空達に気づいて何事か叫んだ。 「聞いたか?今何て言ったんだ?」 ヤムチャが誰に聞くでもなく呟く。 「さあ…おいピッコロ、あいつ何て言ったんだ?」 悟空が傍らのピッコロに出てきた頭から視線を外さずに聞く。 「俺に聞くな!」 すかさずピッコロが悟空に突っ込む。 そんな彼らの後方から意外な答え、いや声が返ってきた。 「ここを離れろ、だ」 その声の主に、全員が一斉にそちらを振り向く。目を丸くするものまでいる始末だ。振り向かれた本人は、先ほどと変わらず腕を組みながら、全員の視線が集中したことに不快感を露わに一層眉間に皺を寄せた。 「ベジータ、おめえ、あいつの言葉わかんのか!?」 悟空がその場の誰もが思った疑問を口にする。 「あの言葉はフリーザのところにいた研究員どもが使っていた言葉だ。どこかの星から連れて来たらしいがな」 そう答えが返ってくると、同時にブルマが声を震わせて誰ともなく言う。 「ねえ、あれヤバいんじゃないの?あの、宇宙船。…さっきより煙の量が半端ないわよ、爆発寸前なんじゃない?」 指をさして、わなわなと震える。言われてそちらに視線をやれば確かにそのようである。程なくして機体には亀裂が入り光が漏れ始める。 「や、やばい、皆離れろ!」 悟空が叫ぶ。 「そ、そうだ!悟空、瞬間移動で…!」 「だめだ!間に合わん!!」 クリリンが叫ぶが、間髪入れずにピッコロもまた叫ぶ。 光が溢れて辺りを白が包んだ。人影が自分の目の前に現れたのを悟空は目を瞑る瞬間に目撃した。 To be continued⇒ ![]() 2008.09 |
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