人間万事塞翁馬 92















一九九年 夏四月

報告書を手に曹操さんの執務室の前に立った私は、内心、驚いた。
想像していなかった人がそこに立っていた。



「おお、殿。息災そうで何よりだ」



そう言って、その人―劉備さん―は爽やかな笑みを浮かべてから、拱手した。
気を取り直し私もまた、それに倣う。
見た目には、私が驚いているなどと、伝わってはいない筈だ。



「ご無沙汰しております。劉備さんもお元気そうで何よりです」



そう答えると、劉備さんは返すように一度、小さく頷いた。
私は一言ことわりを入れ、改めて部屋へと入る。

風を通すため戸が開いたままになっている執務室。
奥に進み曹操さんへ報告書を渡すと、その曹操さんが唐突に言った。



「徐州の統治経過を聞いておったのだ。丁度そなたを呼ぼうと思っておったが、手間が省けた」



報告書を手にそう口にした曹操さんへ、そうだったんですね、と私は短く相槌を打つ。
視界にふと入る許褚さんはいつもどおりだが、夏侯惇さんは腕を組んでまたどこか、難しい顔をしていた。

…まあ、いつもどおりといえば、いつもどおり、なのかな…?

ここには劉備さんの他に関羽さんや張飛さんの姿はない。
城の外か、それとも徐州を完全に留守にするっていうわけにもいかないだろうから、一人で来たのか。
他に同室している郭嘉さんと荀ケさんの姿を視界の端に捉えるが、こちらもいつもどおりのようだった。

そのとき、こちらへと近づいてくる足音が耳に届く。
この部屋より先に、回廊は続いていないから、この部屋に向かってきているのだろうことは想像に難くない。

意識を先来た入り口へ向けると、暫くして一人の伝令兵がぴたりとそこに止まった。
ほぼ無意識に、私は曹操さんの正面を開けるように数歩、退く。
二秒ほど空けてその彼が、静かに、しかし力強く告げた。



「ご報告します」

「申せ」

「袁術が帝を僭称し、北上を開始しました!」

「袁術が動いたか……。分かった。ご苦労、下がって良いぞ」



低く、確認するように呟いてから曹操さんがそう告げると、伝令兵は拱手してから持ち場へだろう、戻っていった。
それから、数秒を間を開けて、夏侯惇さんが腕組みを解きながら曹操さんを見て言う。



「どうするつもりだ?孟徳」

「どうするも何もない。相手をすれば袁紹に背を向けることになるが、のさばらせてもおけぬ。迅速に叩くぞ」



椅子に腰掛けたまま曹操さんがそう言うと、間髪入れず劉備さんが向き直って言った。



「曹操殿、ならばここは私達も出陣しましょう。下邳での恩を今こそお返ししたい。それに、帝を僭称する逆賊は許しておけませぬ」



語気を強めて言う、そんな劉備さんの申し出に、私のやや後方にいた郭嘉さんが相槌を打つ。



「それは魅力的な提案だね。…曹操殿、ここはぜひ、劉備殿のお力を頼むべきかと」

「噂では、武門で名高い孫家の当主・孫策も、袁術の傘下から抜けたいと考えているようです。彼の者も味方につけてはいかがでしょう」



タイミングを見計らったかのように、荀ケさんがそう付け足した。
暫く、蝉の鳴き声だけが耳に届く。
それほど長い時間ではなかったけど、顎に手をあてて何事か考えていた様子の曹操さんが、不意に顔をあげた。
そして、言う。



「…よし、子細は郭嘉と荀ケの二人に任せる。袁術討伐の手はずを整えよ」



それを合図に、二人は同時に拱手した。
それから数秒、郭嘉さんが私を見てから曹操さんへ視線を移す。



を連れていきますが、構いませんか?」

「わしは構わぬ。の用事が済んだのであればな」



と、二人の視線が私に集中する。
私は、二人を交互に見てから答えた。



「私の用事は報告書の提出です」

「…なら、行こう。時間が惜しい」



言ってから、郭嘉さんが踵を返す。
それでも、ちっとも惜しそうな声も所作も感じられないのは、郭嘉さんだから仕方がない。
いつも余裕そうに見えるのが、所謂この人の”普通”なのだ。
今更、何を言う気もないし、言いたい言葉も思い浮かばない。
仕方がない、とは言ったけど…まあ、褒め言葉よ。

荀ケさんがそのあとを追うのを確認してから、私もまたその場で残った人たちをざっと見渡してから拱手して、それから退出した。

二人の背を追って早足で歩くこと間もなく、不意に後方から呼び止められて、私は思わず足を止める。
振り向くと劉備さんがそこに立っていた。
回廊の外の日差しが強くて、庇の下にいる劉備さんを見ていると、視界の端とのコントラストで眩しさを感じた。
思わず目を細める。

劉備さんが、こちらへ近づきながら笑みを浮かべ口を開いた。



「すまぬ、急に呼び止めたりなどして。実は…」

「劉備」



そのとき、何の前触れもなく、劉備さんの声を遮って夏侯惇さんが声を上げた。

劉備さんが遮るような形で私の前にいたおかげで、全然気づけなかった私は声だけの存在に、思わず目を見開いた。
どちらともなく、夏侯惇さんのいる方を見やる。
こちらへと歩み寄ってくる夏侯惇さんに僅かな威圧感を感じたのは、気のせいだろうか。

そして、ごく近くまで来てから足を止め、夏侯惇さんが劉備さんに向き直る。



「いつもの二人は一緒ではないのか?」

「翼徳が宮城の外で待っています。此度は雲長が留守番を…」



と、劉備さんが答えているというのに、夏侯惇さんが途中で私へ露骨に視線を向ける。
それに気づいた劉備さんも、消えていく言葉と一緒に私を見た。
それから間髪入れず、夏侯惇さんが実に不機嫌そうに、言う。



、おまえ何をしている。早く荀ケたちのもとへ行け。時間が無いのではなかったのか?郭嘉はそう言っていた筈だが?」

「…え、と…はい。…、すみません、失礼します。劉備さん、また次の機会にゆっくり」

「あ、ああ」



あまりの不機嫌そうな物言いと、僅かに感じる妙な威圧感に苦笑いを浮かべてしまうのを抑えつつ、私は頭を下げてからその場を後にした。
回廊を少し小走りで、もう大分小さくなってしまった郭嘉さんと荀ケさんの背を追いながら疑問符だらけの脳内で、いくつ目かの疑問符を再度浮かべながら、内心首を傾げる。
と同時に、下邳で話していたことをふと思い出して、徹底してるなー、と私は少し、関心してしまうのだった。









 * * *










宮城を出ると、程なく翼徳の姿が目に入った。
こちらに背を向けるその更に先に、小さくなっていく少女の後ろ姿が確認できる。
ふと、僅かな疑問を抱きながら、私は翼徳のもとへと急いだ。



「翼徳、すまぬ。待たせたな」

「…おう、兄者。なんだ、早かったじゃねえかよ。には会わなかったのか?」



と振り向きながらそう言って、翼徳は腰に手を当てた。



「ああ、会ったには会ったが…丁度、袁術が北進を開始したという報せが入ったのだ。彼女も忙しい身の上…、残念だがゆっくりと話をする時間はなかった」

「ちっ、袁術の野郎…兄者の邪魔すんじゃねえよ」



言いながら空を睨みあげ舌打ちする翼徳に、私は思わず苦笑した。
それから一拍ほど置いて、ところで、と切り出す。
翼徳が、視線をこちらへと向ける。



「今夜はここで一泊することになった。宿を用意してくれたそうだ」

「宿?戦が始まるんだろ?そんな悠長でいいのかよ?」

「無碍にすることも出来ぬし、すぐにすぐ開戦というわけではない。それに、今ここを出ても明朝出立しても、さして変わらぬ」

「…ま、兄者がいいってんなら、俺はいいぜ」

「そうか。ならば行くとしよう」



それから、私はその宿のある方向へと足を向けた。
翼徳が、案内役はいないのか、と声を上げたが、知っている場所だったのでそこだけは断ったと告げると、どこか上機嫌で短く相槌を打つ。
日は南中よりも傾いている。
まだ空は青く、白い雲がやや早く流れていた。

道中翼徳と会話をしながら、それでも頭の片隅では別のことを考える。
殿に、下邳で聞くことが出来なかった、問い。

殿は戦場に出ること、辛いとは感じないのか。

陳宮の言っていた言葉、そして、あの日殿が言っていた言葉を交互に思い出しながら、それでも出ない答えに焦燥に似た何かが、心中渦巻く。
気づくと目的地に着いていたが、何をしていても、私はその日、どこか上の空で過ごしていた。

それほど大きくはないが宴の席を設けた、と曹操殿から使いが来て出席したそこでも変わることはなかった。
殿の姿は当然、そこにはなく、今回はもう会えることもないだろうと半ば諦める。
そこでふと、そんなことを考える自分に気づいて、こんなにも自分は殿のことを救いたいと思っているのだと、やっと認識した。
そう…、きっと救いたい、救い出したいと、私は思っているのだ。


――翌、早朝。
酒が残っているのか、欠伸ばかりする翼徳を連れて馬を牽き、通りを歩いていると視線を上げた先に見覚えのある人影を確認した。
殿だった。
なんという幸運だろうか、と心が躍り出しそうになるのを抑えながら一度深呼吸をする。
此度こそ、問おう。
と心に決めて、段々と近づくそこへ焦点を合わせる。
不意に、今まで気怠そうに歩いていた筈の翼徳が駆け出した。
向かった先は、殿のもとだ。
その名を呼んでから、殿の目の前で立ち止まった翼徳との、二人の会話が耳に届く。



「おめえ、昨夜(ゆうべ)なんで来なかったんだよ!折角、待ってたのによ」

「すみません、張飛さん。どうしても時間の調整がつかなくて…申し訳なかったです」

「ああ…まあ、なんだ…頭下げるほどのことでもねえって…。…そうだ、兄者が手合わせしたいって言ってたぜ!」

「……、……まさか、関羽さんが…ってことですか?」

「あったりめえだろ!他に誰がいるってんだ」

「な、なんで…?」

「ん?そりゃ、張遼に勝ったからに決まってらあ。兄者もそう言ってたぜ」

「ははは…、そ、そうですか。…ま、まあ機会があれば…いいですけどね…」



ぎこちなく笑っている殿の顔を見て、思わず口元が緩む。
私に気づいた殿が、挨拶をしながら会釈をした。



「お発ちになるんですね。道中、お気をつけて」

「ああ、ありがとう。また戦が始まり忙しくなるだろうが、お互い頑張ろうではないか」

「そうですね。少しでも、世の中が安らげるように」



その言葉に私は、同じなのだ、とどこか安堵した。
それから、一度息を吸って切り替える。
此度こそ、問う。
同じであるならば、やはり…。



「ところで、殿。かねてより、お聞きしたいことがあったのだが…問うても良いだろうか?」

「…、はい。お答えできるものでしたら、お答えします」



そう言って微笑む殿を見て、無意識に小さく頷く。
一拍置いて、私は問うた。



殿は戦場に出ること、辛いと思うことはないのか?」



翼徳が兄者、と小さく呟いてから数拍、沈黙が流れた。
だが、殿の表情は変わらない。
微笑を浮かべたその顔が、更に深い笑みへと変わった。



「今この瞬間に苦しんでいる人こそ、誰よりも辛い。成すべきことをする、成すべきを成す、そう決めたから辛くはありません」



心の中で反芻し、噛み締めた。
一拍置いて、殿がその笑みのまま言う。



「これで、答えになりますか?」

「…あ、ああ。すまぬ、おかしなことを聞いたな」

「いいえ。劉備さんは、本当にお優しい方なんですね。私のことも気にしてくださる、そういうことですよね?」



ごく明るく、何かを気にした様子もなくそう口にした殿に、私は流れのまま短く相槌を打った。

可もなく不可もなく、上もなく下もなく、何かを期待したり誇示したりする様子もない。
まるで他人事のように、他者を評価するかの如く、そんな風に…そう聞こえた。

殿が会釈しながら言う。



「感謝いたします。ただ私は、自分勝手な、自分の思いのためにここにいる。だから人が気にかけてくださる程の価値なんて何もありません。関羽さんによろしくお伝え下さい。機会があれば、またお会いしましょう」



そう告げて、殿は続けざま翼徳にも一言交わすと、出仕に遅れるのでと言い残し、去って行った。
その、ぴんと張る後ろ姿を目で追う。

辛くないわけがない。
別の道もある。
少なくとも、彼女には。

朝焼けに染まっていた空は白み始めていた。










 * * * 










帝からの詔勅を受けた俺達は、一路徐州の小沛へと向かった。
俺達っつっても、主なのは俺と程普の二人だけだ。
本腰入れて袁術を攻める前に、手を組む者(もん)同士で顔合わせしとこうぜってやつだと、周瑜から聞いてる。
難しいことはよく分かんねえが、他の奴らのために俺が行かなきゃなんねえってんなら、行くさ。
周瑜たちはその間に、戦の準備をしてくれるってことだ。
まあ、なんだ。
とりあえず、あんまり難しいことは、程普に任せよう。
俺はそういうの、柄じゃねえし、苦手だしな。

それから暫く、小沛に着いてから予定通り顔合わせが終わる。
幕舎には曹操は勿論、袁紹や劉備もいた。
大体皆、俺と程普みたいに、一人か二人誰かしらと同席しているみたいだったが、やっぱ並んで見てみると曹操と夏侯惇の二人が一番空気が違うっていうか、なんていうか。
負けてらんねえよな、って改めて思ったぜ。

…と、まあそれはさておき、今回の戦の指揮は曹操が取るってことで話はまとまった。
袁紹は名族名族言ってたが…、あいつも袁術と大して変わんねえのかもしれねえな。
”名族”なんて、なんの意味もないのによ。



「孫策殿、そろそろ」

「…ん?ああ、そうだな」



程普に言われて顔をあげると、幕舎の中には俺達しかいなかった。
らしくもなく考え込んでたらしい。
気を取り直して視線を上げ、外に出る。
空を見上げると厚い雲が覆っていたが、色は白い。

雨は降らねえか。
江東に比べると全然熱くねえが、それでもやっぱりちょっと蒸すか?

その時、不意に声をかけられた。
視線を向けるとそこには曹操と夏侯惇がこっちを見て立っている。



「既に打診しておった件だが…、これより先のことを考え、我が臣を一人そちらへ使わせたい。よろしいか?」

「その件…、我らとて人は足りている。無用な借りを作る気もない、丁重にお断りする」

「まあ、そう申さず。あらゆる万全を尽くすために、連携を密にしておきたいのだ。その者、少々変わった特技を持っておってな。…、もしこれを借りと言うのであれば、わしらにとってもこれは借りとなる。ならば、お互いそもそも借りなど存在せぬと思うが、如何か?」

「……こちらの意を入れぬか…」

「まあまあ、程普いいじゃねえか。借りはお互いにねえってんなら、俺は構わねえよ。いいぜ、曹操。そいつ一緒に連れてっても」



と、半分忘れていたことを思い出しながら俺は曹操にそう言った。

周瑜が俺と二人になったときそういや言ってたんだ。
もし、曹操が直接このことを言いに来たら、どうするかは俺の勘に任せるって。

今んとこ話聞いてても、俺には先のことはよく分かんねえし、程普は嫌だってことは分かったが、俺は別に嫌じゃねえから…とりあえず受けたっていいだろ。
なんかあったら、そんとき考える。
きっと、その辺は周瑜も何か対策考えてるから俺に任せるっつったんだ。
だったら、俺は俺の勘を信じるぜ。

腑に落ちないような顔をする程普と対象的に、曹操は口元に笑みを浮かべて一度頷いた。
そのやや後ろに立ってる夏侯惇はさっきから無表情で突っ立ったままだから、何考えてるかよく分かんねえ。
数拍間を追いて、曹操が俺達が入っていた幕舎とは違う幕舎へ視線をやりながら、少し声を張り上げた。



「聞いておっただろう。こちらへ来い、




変わった字(なまえ)…だよな?

と思いながら俺はつられてそちらへ視線を向ける。
間を開けず、そこから一人の人影が出てきた。
すらっとした、普通よりやや背の高い女。
顔はほんの少しだけ幼さが見えるし飾り気はまったくないが、間違いなく美人だ。
しかも、ちょっと美人、とかいう類(たぐい)じゃねえ。
思わず視線が釘付けになる。

俺をまっすぐ見ながら近づいてくる。
そして、俺の目の前まで足を止めたその女――は、改めるように、俺に視線を向けてから程普へ視線を移し一瞬固まった後、しかし、何事もなかったように向き直り拱手して言った。



「お初にお目にかかります、と申します。以後、お見知りおきを」



高すぎず、低すぎない声。
何故か耳に心地いいと思う声だった。
大喬とは、姿も声も全く違う。
纏っている空気も違う。

少し呆然としてしまった自分を叩き起こした。



「あ、ああ。よろしくな!俺は孫策、孫伯符ってんだ。んで、こっちは程普…」



と傍らの程普に視線をやると、珍しく呆然としたように固まっている。
いつもびしっとしてる、あの程普が。



「どうした?程普。…もしかして、知り合いか?」

「いや。…我輩は程普、程徳謀だ」

「程普…さん、ですか。どうぞ、よろしくお願いいたします」



目の前のもまた、どこか戸惑いの見える、そんな空気で程普に答える。
曹操が不思議そうに言った。



、おぬし…程普のこと、知っておるのか?」

「…え?」

「そう見えるが、わしの勘違いか」

「あ、…いえ、そういうわけではなくて、その…」



と、どこか遠慮がちに程普に視線をやってから、その先を言い淀むに珍しく程普が口を開いた。



「構わぬ、申されてみよ」



すると、は順繰りに俺達の顔を見渡してから、最後にまた程普へ視線を向けて言った。



「失礼ながら、私の亡き祖父に瓜二つでございましたので、あまりの事に驚いてしまい…その、初対面の方にご無礼を致しました。どうぞ、お許しください」

「我輩に…?」

「ほお、不思議な事もあるものだ」

「ん?どういうことだ?曹操」



疑問を率直に曹操へ投げると、曹操は俺を見てからを見た。
そして言った。



、話しても良いか?」

「ええ、どうぞ」



そうしてから、曹操が改めて俺達に言う。



「なに。このはな、異国出身なのだ。故に、国が違うというのに他人が似るなどということがあるものか、と不思議に思っただけのことよ」

「へえ!そうなのかよ。道理で変わった字(なまえ)してるわけだな。ふうん、面白そうだな、お前!改めて、よろしくしてくれよな、!」

「…、はい。こちらこそ」



思わず一緒に出ちまった俺の手を、は笑みを浮かべて握り直した。
大喬ほどじゃないが、小さくて華奢な手だ。
一瞬心のどこかで、ちゃんと戦えるのか、と思ったが、同時に尚香の顔が頭に浮かんで、大丈夫か、と思い直した。

ふと、程普に視線を向ける。
ただじっとを見ているようだった。
理由を聞きたかったが、今は聞くべきじゃないと俺の勘はそう言った。

…まさか、一目惚れしたとかじゃないよな…程普に限って。

とまた別のことを考えたが、若輩者め、と怒られる気がしてすぐさま内心頭を振る。




「では、話が済んだところで、わしたちは行く。、あとは任せたぞ」

「はい、次は寿春にて。予定通りに進むよう、最善を尽くします」



言葉を交わして去っていく曹操に、遅れて歩き出した夏侯惇が一度足を止めて振り返った。
を見る。



「お前、無茶だけはするなよ」

「十分承知してます。大丈夫です」

「……、お前の能力は信じているが、その大丈夫、だけは信じられん…」



それだけ言い残して、夏侯惇はため息混じりに去って行った。
の、厳しいなあ、という苦笑混じりの小さな呟きが耳に入る。
不意に程普が行った。



「然らば、孫策殿。我輩たちも発ちましょうぞ。孫策殿が戻らねば、他の者も動けはすまい」

「だな!んじゃ、ぱぱっと戻ろうぜ!…ってことだから、、準備はいいか?」

「はい、いつでも発てます」

「よし!そんなら戻るぜ、江東に!」



それから俺達は江東を目指して小沛を発つ。
意味もなく、を早く皆に紹介したい、と逸る気持ちを抑えることが出来なかった。















つづく⇒



ぼやき(反転してください)


曹操と孫策の邂逅会話イベント刷り込ませようと思ってたのに、展開間違えて入れられなかった…
まあ、いいか…
話外のどっかでやってます←


2019.09.30



←管理人にエサを与える。


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