一九四年 十月 人間万事塞翁馬 37 「うん、我ながら上手くできたんじゃないかな」 私は書斎に面した縁側に座り込んで、今しがた作り終えたばかりの手中の桐箱に視線を落した。 今日は休みで、今は多分十三時回ったくらい。 最近はずっと天気が良くて、もう大分肌寒いけどこの肌切るような感じが割と好き。 それに、今日は日差しがあったかい。 傍らのノミやカンナを道具箱に戻す。 それから、手にしたその箱にほぐした綿花を敷き詰めて、これまた昨日帰宅後に作り終えた房飾りをそこに納めた。 絹糸で動かないように軽く縫いとめて余分を切る。 そのまま引張れば糸は抜けるから、すぐ取り外せるでしょ。 あとは渡すだけだ。 何を作ったのかと言えば、郭嘉さんに渡すお礼の品。 しばらくずっと考えてた。 向こうだったら、例えば使わなくてもハンカチとか、贈答用の菓子折りとか色々適当なものがあるんだけど、こっちって贈答用の菓子折りなんてないし。 なので、お酒贈るとか、奢るとか、色々考えたけどどれも何かイマイチだった。 そこでふと思い出した。 そういえば、郭嘉さんってあの服に付けてる房飾り、ぱっと見は分からないけど毎日違うの付けてるってことに。 いつだったかそれに気づいたとき、ああ、お洒落さんなのね、と思った。 そんなことを思い出しながら、市場で李典さんへのお返し探してる時に、たまたますっごい上物の、房に使えそうな材料が目に入ってこれだなと思ったのよ。 それで、房そのものをそのとき探してみたんだけど、案の定特注みたいで市場にはどこ探しても無かったのよね。 だから、もうとりあえず房贈ることにして作ろう、って決めて材料集めたわけ。 金物飾りは専門の工房探して注文した。 図柄オリジナルでもオッケーだっていうので、めでたそうな吉祥紋紙に描いて渡したわ。 出来上がりも上々。 良い腕してるわ。 だからもう、全部これ以上ないぐらいの上物よ。 出来上がりも我ながら手作りとは思えない完成度。 言うことないわ。 ただ、材料物色しながら困ったのは入れ物。 まさか生で渡すのはちょっと色気ないな、と思って材木市場に行ってみたら、結構良い肌した桐の挽き板があったので、即購入。 なければ作る。 人間やろうと思って出来ないことなんて、そうそう無いわ。 そんな訳で、完成品が今目の前にあるこれ。 まあ、装飾品でしかも手作りって重いかとも思ったけど、こっちにもそういう概念があるのか謎だし、そもそもいらなきゃ捨ててもらえばいい話。 言葉だけじゃ足りないかなと思ったから気休めに付けるだけだし。 おまけに、向こうみたいに色んなもの買いに行けば何でもあるような世の中じゃないから、ここ。 だから、結局そういう概念があるのか謎、なのよね。 もう、そういう感じで妥協するしかないと思う。 さて、いつ渡すか…まあ、何か別のことして考えよう。 李典さんへのお返しも、似たような色の上物見つけて作ったし。 …これもさ、売ってなかったんだよ、あの形じゃ。 嘘だろって思ったよ。 みんな特注だよ。 箱も作って、あと渡すだけになってるから、まあ、これもいつ渡しに行くかね…。 とりあえず、今日しなきゃいけないことは済んだから、どうしようかな…。 当てもなく情報収集するのもいいけど、最近一通り聞きつくした感あるのよね。 今朝も聞き込みしたけど、今のところ新しいことはないよ!って言われちゃったしな。 もう今日は諦めて…。 「着替えて読み物でもするか…」 私は縁側に広げたものを片づけながら部屋に入る。 北隣に位置する寝室に入ってから削りくずの落しきれない粉が付いた服を脱いで、着物に着替えた。 面倒だから裸足でいいや。 こっちって基本が土足なんだけど、自分しかいない時は落ち着かないから裸足か屋内専用にしてある靴履くようにしてる。 ついでだったから、簡単に下駄と草履も作っといたわ。 草履の方が屋内用。 着物にこれら以外って落ち着かないのよ、なんとなく。 で、外に出ないと決めた日は基本こっちに来た時に着てた着物を着てる。 まあ、部屋着かな。 着替えてから洗濯物入れ用の竹籠に服を入れて浴室スペースに持って行った。 そこから改めて寝室に入り、更にその西隣にある書庫に入る。 本棚を六台作って並べてあるけど、既に半分が埋まっている。 大して種類はないんだけどな。 どう考えても竹簡だからだろう。 そう考えると紙に写してもいいけど、今そういう気分じゃないし…。 けど、それも考えないとこのままいけばすぐに埋まる。 ちょっとそれも考えよう。 そんなことを思いながら、私は市場で買ってからもう何度か目を通している尉繚子を手にして縁側へ戻った。 何回かは覚えてないけど、中身ちゃんと理解するには何度も読まないとね。 読書百遍、義自ら見(あらわ)るって言うじゃない。 ってあれ、これ出典なんだったっけ? こういうの割と覚えてる方なんだけど…。 まあ、いっかなんでも。 縁(へり)に腰を下ろし、足を投げ出して竹簡を開く。 元々は土間みたいなもんだった屋敷の床を嵩上げリフォームしたのでその床レベルに合わせて作った縁側は地面から少し高くなっている。 だから、深く座ると足は微妙につかない。 微妙に、ね。 それから視線を落して私はそれを読みふけった。 日差しの温かさに、途中欠伸をかみ殺す。 いい加減、夢見が悪化してから一か月以上たつけど、ずっとそれは変わらず、余り眠れていない。 あともう一か月同じようなことが続いたら、多分私体調崩すな、と思った。 理由は全然違うけど、向こうで仕事してた時に同じ状態になったことがある。 その時は頭痛と怠さを感じた。 気のせいだと思って仕事し続けてたら、三週間近く37度半ばぐらいの熱が下がらないわ、怠いわで酷い目に遭った、本当に。 因みに私の平熱は、健康そのもの36.5度。 とりあえずそんな状態で仕事はそのまま続けてたけど、まずいなと思っていた矢先…。 運よく連休に入って現場が休みになったから、連休中にどうにかしたのよね。 泥のように寝たわ。 どうも風邪ではなかったみたいだけど。 風邪薬効かなかったし。 無理のし過ぎ? ともかく、ここは連休っていう概念がないからそういう分けにもいかないし、どうにかしないと。 だけど、理由が夢見じゃどうしようもない。 向こうなら最終手段で睡眠薬とか使うけど、こっちじゃそんなの手軽に手に入らない。 まあ、あまりそういうものの世話にはなりたくないけど。 ああ、どうしようかな。 そうだ、睡眠用じゃなくても今度薬草扱ってる人に色々聞き込みしてみよう。 そういう本って売ってなかったから、聞くしかないし。 薬草扱ってる店がない訳じゃないけど、覚えておいて損はないわ。 そんなことを考えながら、私は上体を自分の左側へ倒した。 上半身だけ横向きに寝転んでるような状態で竹簡を読む。 視線を少しだけ上げると、屋敷の門の手前に設けた目隠し用の塀が目に入った。 もともとそこには塀なんかなかったんだけど、フルオープンの門からダイレクトに屋敷が丸見えなので、落ち着かないから作ってもらった。 何がどうってわけじゃないけど、流石に丸見えなのは落ち着かないよ。 竹簡に視線を戻す。 ちょっと体が痛くなって、身体をよじったまま仰向けになった。 両手で竹簡を頭上へ持ち上げる。 もう何かを読む分には、そこまでの支障はない。 ただごくたまに、まだ知らない単語が出て来る。 そういう時は、仕事場が一緒になったので伯寧さんに聞くことにしてる。 他の人に比べたら、気心も知れてるし。 聞きたい時に不在なら、状況に応じて郭嘉さんか荀ケさんか荀攸さん。 そんな感じ。 因みに、郭嘉さんとはまだ交換日記してる。 相変わらず恋文くれるけどね。 もう、なんだっていいわ。 欠伸が出る。 「だめだ、眠くなってきちゃった…ちょっと肌寒いけど日差しが気持ちよすぎる」 たまには家で昼寝もいいか。 睡眠足りてないし。 …また夢、見ないよね……。 仕事の昼休憩に数回昼寝を試みたんだけど夢見悪すぎてやめたんだよね。 夜寝るより最悪。 それからは昼済ませたら調べものするのに使ってる。 因みに昼ごはんは弁当持って行ってる、って言っても握り飯っぽいものだけだけど。 夏は、多分弁当は駄目だな、保冷剤ないし。 あ、でもそこまで暑くないのかな…? 「んー、瞼が落ちてくる…いいや、ちょっとだけ目瞑ろう、寝なきゃ大丈夫でしょ」 そう呟いてから、私は竹簡を自分の顔にのせて目を瞑る。 ちょっと遠くから練兵か何かのかけ声が聞こえてくる。 長閑だなーと思いながら、当然のように、いつのまにか私は爆睡していた。 * * * 別に何か用事があった訳じゃない。 散歩しながら思索に耽っていたらの邸のある通りに出ていた。 執務室が同じになったので、ほぼ毎日顔を合わせているし、話もしている。 初日に、郭嘉殿と文のやり取りをしていることを初めて知った。 何とも言えない気分になって、その時は心の中で頭を横に振った。 何を考えているんだろう、と。 それから最近、夏侯惇殿に稽古をつけてもらうようになった、らしい。 それはから聞いたのではなく、同室になった翌日に郭嘉殿がに話を振ったので判明したことだけど。 まあ、もちろん驚いたさ。 多分、直接押さえつけるなんてことが無い限り、得物を持たせたら間違いなく私たち―無論、同部屋の面々だ―より強い気がしてならないからね。 当然、それは今のままでの話だ。 そこへ更に、夏侯惇殿に稽古をつけてもらうなんて、何かの冗談かと思った。 けど、が真面目な表情で、戦場出た時に足引っ張りたくないから、なんて言うものだからやめろとは言えなかった。 郭嘉殿は止めていたけど。 だけど、そんなことが聞くはずもなくて、結局に『始業してるので仕事して下さい』と道理を言われその話はそこで終わってしまった。 足引っ張るとか引張らないとか、そんなこと言わずに協力していけばいい話だと思うのだけど、どうして一人でどうにかしようとしてしまうんだろう。 最近どうも、そこに拍車がかかっている。 というか、慣れてきたせいだろう。 向こうで普段していたことが、段々出てきているんだと思う。 そうやって考えると、の能力もそうだけど、立ち居振る舞いにも本当に驚く。 どんな場面でも幅広く、そつなくこなしすぎて。 それも踏まえて、一人でどうにかしようという姿勢が、どうにも身に付きすぎていて全く隙がない。 そこを私はどうにかしたいと思っているんだけど、今のところいい案は浮かばないな。 おまけに休みの日でも散歩をしていると、市場や城内の色んな所で調べものをしているらしいを見かける。 大体は朝の内が多いけど…、評議をした日にも思ったが、一体はいつ休んでるんだ? 出仕しても、休憩時間になるといつのまにか居なくなってるし。 ただ、ごく最近気づいたのは、が人目を盗んで欠伸をかみ殺しているってこと。 しかも段々回数が増えてる。 そこから推察するに、多分夜ちゃんと寝てないんじゃないか、と思う。 理由は分からないけど、きっとそういうことだ。 私はそんなことを考えながら、の邸の門の前で足を止めた。 少しだけ視線を上げて、門の向こうを見やる。 目隠しのために門から七尺ほど―約1.7メートル―離れた所に塀が設けられている。 そこを回らないと、邸の様子は分からない。 は居るのだろうか? 私は何となく気になり、邸を覗いてみることにした。 不在なら不在で構わない。 門をくぐり、向かって左から塀を回り込む。 視線を無意識に右へ向けた。 今日は天気もいいし、日差しも心地良い。 そんなことを考えながら、ちょっと肌寒いかなと思ったところへ目に飛び込んできたのは、縁側―とは言っていた―で足を放り出し寝そべっているの姿。 竹簡を顔にのせているようだ。 微動だにしない。 どこからどう見ても寝ているのが分かる。 「なんて無防備なことを…!」 私は思わず声を上げ、額に手を当てた。 いつもより、歩幅が広くなる。 急いで近づいて、をゆすった。 ともかく、このままの状態は良くない。 「、起きて。こんな所で寝ていたら風邪をひく、」 しかし、全く起きる気配がない。 その間にも、竹簡が顔からずれ落ちる。 気づいて視線を上げれば、そこには当然の様にの寝顔。 濮陽で気を失っていた時と違って穏やかな顔をしている。 勿論、こんな寝顔を見るのは初めてだ。 こうしてみると、容姿が十五から七の頃になっているとは聞いていたが、寝顔は更に幼く見える。 なんとなく、見てはいけないものを見てしまったような気持ちになって、耳が熱くなった。 これはだめだ、と視線を逸らそうとしたとき、ふと目に入るの足元。 全然、気づかなかったけど素足だ。 それから少しだけ服の裾がはだけて、膝下あたりまで、その素肌がちらりと見える。 何故か、が以前言っていた言葉が甦る。 『道理で最近肌艶良すぎるし』 思わず顔を振った。 「だめだ、刺激が強すぎる」 私はもう一度、の名を呼びながら、その身体をゆすった。 しかし、相変わらず起きる気配はなく、それどころかこの規則正しい寝息と安らかな表情。 私は、無理矢理起こすのが何だか可哀想だと思い始め、一度ため息を吐いた。 「…仕方ない。とりあえず、起きるまで横に居よう」 上衣―衫―の紐を解いて脱ぐ。 それをに掛けてやりながら、その頭の側へ距離をとって腰を下ろした。 竹簡を巻き取り傍らに置き、何となく身を左へよじって室内を見やる。 北東の壁際に置いてある書机が目に入った。 その角、開口に面するその上に竹の花入れが置いてある。 細めの竹で、多分自分で作ったんだと思う。 そこに一輪、花が挿してあった。 あまり詳しくはないが、野菊だろう。 そろそろ時期も終わる筈だ。 城内では見かけたことが無い。 「外にも行ってるのか…お願いだから大人しくしててくれないかな…」 私は呆れて、に視線を落した。 相変わらずの寝顔。 「…無理な話か……」 溜息を一つ吐いた。 両手を後ろについて空を見上げる。 ほんの僅かだが、冷たい風が吹いている。 できればここから中へ移動させたい。 もう一度に視線を落した。 流石に抱き上げたら起きるだろうな…。 結局、そこから移動させるのは諦めて私はもう一度ため息を吐いた。 そのとき何か、声がしたのに気付いた。 それは間違いなくのもので、寝言かな、と思って視線を落す。 眉間を寄せていた。 ぴくりと胸の上にのっていた右手が衫の下で動いたのが分かる。 「なに…知ら…な…」 寝言…。 それで、私は理解した。 「夢見が悪い、のか…だから…」 私は暫く考えてからとの距離を少し詰めて、その頭を、起こしてしまわないようにそっと自分の腿にのせた。 それから、その瞼の上に手をのせる。 そこに力が籠っているのが分かる。 そして、ほんの少しだけ冷たい。 暫く見下ろしてから、に向かって言った。 「大丈夫。そばにいるから、ゆっくりお休み。」 それほど長くはない時間そうする。 そこから力が抜けていくのを感じてから手をはなした。 もとの安らかなそれに戻ったのを確認して、ひとまず胸をなで下ろす。 唐突にが身じろいで、顔を横に、外へ向けた。 と同時に、その胸に置いていた右手を顔の横に持ってくる。 衫が少しだけずれ落ちた。 私の腿の上に、軽く握られたの右手がのっている。 私はその右手を開いてやりながら置き直し、衫を肩まであげた。 爪は半分まで伸びたと言っていたが、まだそこには晒しが巻いてある。 多分、そこまで生活するのに支障はない筈だ。 聞かないでいるが、きっと見たくないのだろうと思う。 の前髪が、さらりと顔に落ちる。 横顔が露わになる。 睫毛が、自分が思っていた以上に長い。 目を伏せるその横顔が何故かものすごく色っぽく見えた。 触れたくなるほど、その肌は滑らかに見える。 思わず手を伸ばしたのを、触れる寸前に気づいて止める。 拳を握った。 だから、私は何を考えているんだ。 誤魔化すように視線をの身体がある方と反対側に落す。 さっき巻き直した竹簡がそこに置いてあった。 「そういえば…」 何を読んでいたんだろう。 左手に取って中を開く。 さっきは気にしなかったけど、開き易い…もう何回も何十回も読まれてる。 それから視線を滑らせてすぐ、それが何の書か分かった。 自分も、もう何度もそれこそ数えきれないぐらい読んでいる。 「尉繚子…」 まさか今さら、こちらの文に慣れるため読んでいる、という訳ではないだろう。 例えそうだったとしても、数回読めば済む話だ。 それに、これの状態を見ていると読んでる目的はそんな可愛い理由ではなさそうだった。 朱墨で所々印と一緒に注釈のようなものがつけてある。 そこを拾い上げていけば、いくつかの仮定が容易に浮かぶ。 けど、それを私は考えたくない。 ―― はきっと慣れていない事だろうけど、それでも一度それを経験してしまえば驚くほどの速さで、きっとそれを覚えてしまうだろう。 身に着けて、こなしてしまう。 そんな気がしてならない。 それは主公のことを思えば、良いことなのだと思う。 だけど、自分はそれを、そこまでのことを望んでいない。 ここにいて欲しいと望みながら、一緒に頑張ろうなんて言いながら、そんなことを望むのはただの我儘だ。 望んだことが叶っているのに、どこまで私は……何を、望むのだろう。 は自分のことを自分勝手だと言ったけど、一番自分勝手なのは私だろうな。 勿論、こういう意味で言ったのではないことは分かっているけど。 私はそのままを視界から隠すように竹簡を持ち直して、ただそれを読みふけった。 日が段々と傾いて緩やかに気温が下がっていくのを感じながら、ただ何度も、何度も読み続けた。 * * * ―――夢を見た。 いつも見る夢。 初めて手を掛けた兵士の、その瞬間の顔と手の中に残る感触。 それほど大したことの無い感触。 きっと、昔何度か狩猟していたじいちゃんを手伝って猪とか鹿とか雉なんかを解体したことがあったからだと思う。 だから大したことはないと思ったんだと思う。 だけど、記憶に残るその兵士の表情は私の鼓動を早める。 それから向こうに居たとき指を怪我した当時を見る。 左の指やったとき、心臓壊れるんじゃないかってぐらいドキドキした。 本当、指落さなくて良かった。 恐怖を感じた。 それ以前に、釘を右の指に差したこともあった。 あれも結構怖かったけど、そんなの比じゃない。 だって、その瞬間、瞬時に指落したっていう大工さんのこと、何人か思い出したから。 先っちょ無いの見せてもらったことある。 その時は、他に一緒にいた製材所のおじさんとか棟梁が余りに騒ぐので、冗談言って誤魔化した。 おかげで割と早い内にその経験は笑い話に変わった。 そのあと直ぐに別の場面に変わる。 ――陳宮と呂布の顔が浮かぶ。 目の前にあって、それからその時のことを、まざまざと思い出す。 まるで昨日のことの様に。 いつもはそれで目が覚めるけど、今回は違った。 何故か途中から手の中に、人の体温の温かさを感じた。 いきなり視界が開けて、そしたら私はいつか過ぎた日の夢を見た。 じいちゃんちの縁側で、春、菜の花や色んな花の香りを感じながらじいちゃんに膝枕してもらって寝た日のことを。 一緒にお手玉したり、竹トンボ作りながら縁側で過ごした。 日差しが暖かくて、うとうとし始めた私をじいちゃんはその膝に寝かせてくれた。 あったかくて、柔らかくて頭を優しく撫でてくれてたのを覚えてる。 それが心地よくて、そうしてくれるじいちゃんが大好きで、いつのまにか私は寝てしまった。 それから数回、私はじいちゃんに甘えて同じことをしてもらった。 頭を撫でて欲しいと、強請ったこともあった。 そんな時もあった――。 じいちゃんの手は大きくてごつごつしてたけど、優しかった。 じいちゃんはいつも優しかった。 近所の人たちは、頑固で融通きかなくておじいちゃん大変じゃない?って挨拶する度言ってたけど、そんなこと一度も思ったことが無い。 そういう所も見たことが無い。 私はただ、そんなことを言う近所の人たちが不思議でたまらなかった。 こんなに優しいのに、何を見ているの?って。 私はじいちゃんみたいになりたい。 誰かに優しくできる人になりたい。 そう思っていたのはいつの話だろう。 ああ、でも私、なんでこんな夢見たんだろう。 この時のことを思い出すと、懐かしさと同時に、何も知らなかった自分が馬鹿らしくなる。 優しいだけじゃ何もできない。 辛さを知らない優しさなんて、優しさじゃない。 辛いことも苦しいことも経験せずに、そしてその気持ちを知りもせずにする、それはただの偽善だ。 大した考えもなく知らずに行う行為の愚かさ、恐ろしさ。 それでもきっと、もしかしたらその全てが結局は偽善なのかもしれない。 それでも私は…。 取り返しのつかない結果を招いたとき、私には何が出来るんだろう。 そうならないようにするためには、一体私には何が出来るんだろう。 優しいだけなら誰だってできる。 優しいっていうのはそういう事を言うんじゃない。 ――私、どうしてこんなこと考えてるんだろう。 それにしても、何かちょっと肌寒いし、だけど顔の下があったかい。 右手の掌もあったかい。 なんだろう。 なんで、あったかいんだろう――。 私たしか、縁側で目瞑ってたんじゃなかったっけ? 縁側って板でしょ。 こんなあったかくて柔らかい板、今まで触ったことないぞ。 これ寧ろ、あれに似てる。 じいちゃんにしてもらった、膝枕。 ん?膝枕…? 絶対おかしい気がする。 っていうか、これも夢なのかな? でも、夢にしてはちょっとこの肌寒さ、リアルすぎる…気がする……。 そこでやっと私は目を開けた。 先に視界に飛び込んできたのは、視線の先にある塀。 ここ最近見慣れた光景。 「じいちゃんち、じゃない…ね…」 え、じゃあこのちょっと経験したことがあるような無いような膝枕なに? 膝枕でしょ、これ。 そんなことを思っていた矢先、それは唐突に頭上から降ってきた。 「おはよう、。よく眠れたかい?」 「は?」 聞き覚えのある声。 もちろん知ってる、伯寧さんの声だよね。 …なんで、それが上っていうかそんな近くから聞こえるの? え、嘘でしょ…まって、私今どういう状況になってるの?ねえ。 恐る恐る横を向いていた顔を仰向け方向に戻す。 多分、最初は上見てたはずだし、顔に竹簡のせてたと思う。 正面に向ききったとき、同時にちょっとだけ上の方に伯寧さんの顔があった。 私が顔にのせてたはずのそれを両手に持って、上に少しだけ掲げるようにしてる。 伯寧さんの腕と腕の間からその顔が見える。 普通の距離感じゃないよ、これ。 混乱してる私に、構わず伯寧さんが言った。 「おはよう」 「お、おはよう…ございま、す」 私は一度顔をゆっくり横に戻してから思考を停止した。 二拍ほど置いてから我に返る。 違う、そんなこと言ってる場合じゃない! 私は勢いよく身体を起こしながら、両手をついて―所謂四つん這い―伯寧さんを見た。 同時に言った。 「な、な、なんで伯寧さんがここに!?」 「たまたま邸の前を通りかかったから顔を出してみただけだよ」 言いながら、焦る私とは対照的に落ち着き払っている伯寧さんが、開いていた竹簡を巻いて向こう側に置く。 それを見ながら、私は言った。 「そ、そうじゃなくて、今どういう状況だったんですか!?ていうか、私どのぐらい寝て……え、ちょっ」 「じゃあ、おさらいをしようか」 いきなり両方の二の腕を掴まれて抱かれるように身体を反転させられた。 仰向けになって、また、もとの場所に戻る。 頭の後ろが暖かい。 けど、私は今耳が熱い。 私の視線の先の伯寧さんは笑顔だ。 左肩にあった、伯寧さんの手が何かを手繰り寄せて、それを私の肩までかけた。 上着…?伯寧さんの上着、だ…。 「理解できたかい?」 「で、できました…!」 私はそこから素早くすり抜けて、掛けられた上着を伯寧さんの肩にかけ直した。 「お、お返しします!ありがとうございました…!」 「そう?遠慮しなくていいのに」 私は無言で首を横に振る。 伯寧さんが、上着を着ながら私を見た。 「ところで、さっきのもう一つの質問」 「はい…?」 「どのぐらい寝てたと思う?」 私は三秒ほど止まってから、空を見やった。 太陽が大分移動してる。 記憶が確かなら、そこから考えると…。 「に、二時間弱…」 「正解。一刻ぐらいだよ」 「そ、そんなに…私…」 「」 急に名前を呼ぶので、私は伯寧さんに視線をやった。 伯寧さんが少しだけ首を傾けて言う。 「眠気はどう?少しは休まったかい?」 「は、はい…すっきりしました…久しぶりにゆっくり休めました…」 「そうかい?それなら良かった」 「と、とりあえず、中へどうぞ。そのまま上がって下さい」 「じゃあ、お言葉に甘えて失礼しようかな」 私は竹簡を拾い書斎に入ると、文机にそれを置いた。 それから、伯寧さんが中に上るのを確認して、内側の引戸を閉める。 その引戸には、腰ぐらいの高さまでを一枚板、そこから上には千本格子を嵌めてある。 自分で作ろうと思ってたら、青州兵のメンバーの一人に細かい細工の建具作れる人が居て、なんか一部実演しながらやり方を少しだけ教えたら綺麗に作ってくれた。 ほんと、いい職人。 因みに、この格子は外せるので、もうちょっと寒くなってきたら別に作ってある絹を張ったものと交換しようと思う。 そっちは、見た目はまあ普通の障子で、絹だけこのお屋敷が出来た後に自分で張った。 そんなことはさておき、戸を閉めてから後ろを振り向く。 お茶でも淹れようかと思っていたら、伯寧さんが手招きしてる。 「ちょっと、話をしてもいいかい?」 「はい、なんでしょうか」 顔は笑ってるんだけど…なんだろう、そんな改まってされるような話?あったっけ? 私は疑問に思いながら、部屋の真ん中あたりに縁側の方を背に、腰を下ろしている伯寧さんの正面で正座した。 それから顔を上げると、伯寧さんは笑顔のまま言った。 「。お説教してもいいかな?」 「え…はい……お願いします…」 「ありがとう。じゃあ、まずは…」 …そんな考えるほど数があるの? なんとなく、一つは分かる。 けどそれ以外心当たりがない。 そんな私に、表情を変えず伯寧さんが問う。 「夜…いつからちゃんと眠れてないの?」 「ここ最近、です」 思った通り、と思いながら答えた。 すぐ見破られるだろうことも想像できているのに、私の口からはその言葉が出た。 自分でもおかしいと思う。 仕事で説教貰うならこんな必要以上の緊張なんてしないのに、プライベートは駄目だ。 何故か緊張しすぎてしまって頭が回らない。 違う、頭なんて使わなくたって、ただ事実だけ述べればいい。 やましいことじゃない、それだけで、全てが終わる。 気にしてくれるのは有り難いけど、これは自分自身の問題だわ。 自分でどうにかできなきゃ、いつまで経っても変わらない。 「隠すのは構わないけど、それは通用しないよ…いつから、眠れてないの?」 「ここに、許昌に戻ってきて目が覚めてから」 私はただ、質問に答えることにした。 笑顔を消した伯寧さんの顔が驚きのそれに変わる。 私もきっと、他人からそう聞いたら驚きはすると思う。 「それは…まさかと思うけど、毎日かい?」 「毎日、毎晩」 「…何刻自分が眠れているか、自覚できてる?」 「恐らく、二刻」 「自覚できているなら、何か対策とか…してないのかい?」 「もちろん、試してみた。意味なんか、まったくなかったわ」 寧ろ、一日最悪だった。 「…きっと、私寝言か何か言ったんじゃないですか?」 そう聞くと、伯寧さんは少しだけ反応した。 深刻な話にしたくはないから笑って流しちゃいたいのに、何故かそれが上手くできない。 多分、私また甘えてるんだな、と思いながら言った。 「やっぱり。自分の寝言で目が覚める時があるんです。だから、もう…気にしないで下さい……こんなこと…」 「こんなことって…」 「おっしゃりたいことは分かります、気にかけて下さってるのも分かる。それは本当にありがたいし、嬉しいです」 笑えてるのかな、私。 部屋の中は内戸を締めたせいで少し薄暗い。 締めなきゃ良かった。 「けど、これは私の問題で、私が自分でケジメをつけなきゃ何も変わらないんです」 無意識に、右に拳を作る。 同時にあの時が脳裏に浮かぶ。 転機は屋敷が出来てからだった。 その前も毎晩のように悪夢を見ていたのは変わらない。 ただ、たまにほんの少しだけ普段より長く寝られる日があったりした。 けど、屋敷が出来て一人で生活するようになったら、そんなことは全くなくなってそれどころか更に鮮明に思い出すようになった。 色んなものを――。 だけど、一番は陳宮と呂布。 一度夜に目覚めてしまうと指先に触れる全てが怖いと感じる。 昼間は本当に陳宮と呂布なんてどうだっていいと思う。 寧ろ、どうしてやろうか、そのぐらいのことを考えてる。 だけど、一人になると駄目だ。 特に夜は駄目。 暗いと、あのときの薄暗い部屋の中を思い出す。 あの部屋で目が覚めた時、誰も来ないんじゃないかと思った時の気持ちを思い出す。 どうにかしたい、と思っているけど今はどうしようもできない。 ――私は、またあの二人と会った時、普通でいられるだろうか。 恐怖で足がすくんだりしないだろうか。 ちゃんと自分の足で立っていられるだろうか。 そんなことばかり考えて、私は目覚めたあとの時間を過ごす。 油燈に火を入れて、何度も何度も同じ書に目を通す。 色んな情報を集めてまとめた手帳を何度も読み返して他に何が必要なのかを考える。 自分がしたいことをするには何が必要なのかを、ただひたすら考える。 暗い内はそうやって過ごす。 明るくなってきたら、こまごましたことをする。 仕事のある日は出勤する。 そうやって明るい内を過ごして、また夜を迎える。 それの繰り返し。 向こうにいた時と、そう変わらない――。 仕事して、帰ってきたら晩酌してから6時間寝る。 朝、鶏小屋から卵を回収して餌をやる、土をいじる、素振りして、手っ取り早く朝食済ませてから書を数枚書いて、それから出勤。 気晴らしに始めた習い事の入っている日は定時であがって稽古をする。 休みの前日は定時は過ぎるけど、早めに上がる。 休みの日は平日の朝の日課をして、専門書読んだり、料理したりして好きに過ごす。 たまに趣味関係のボランティア頼まれたりするからそれに顔を出す。 大体はそれの繰り返しだった。 何も変わらない。 けど、こっちに来てから時間に余裕は出来た。 プライベートの付き合いも増えた。 それは楽しいと思う。 だからきっと、苦しいと思うことも同じぐらいに増えたんだ、と私は思ってる。 たまに思う。 私はきっと嘘をついてるんだと思うけど、一体それは誰についてる嘘なんだろうと。 それでも、半分は自分でそれを選んだのだから、自分でどうにしかしないと。 何もかもを。 自分が苦しめば苦しむほど、それが深ければ深い程、そう簡単に解決なんかできないことを知ってる。 だけど、いつか笑えればそれでいい。 「自分一人で考えても、例え人に話しても、すぐに解決できることじゃない。だから、今はこれでいい」 「それでも、人に話せば変わることだってある。そういうことは、君が一番分かっているんじゃないのかい?言っている意味、なら分かるよね?」 伯寧さんが静かに言った。 責めるような口調じゃないし、表情だって柔らかい。 それに、言いたいことも分かる。 仕事じゃよく私が暗に人にさせてたことだ。 辛いことは、吐き出させる。 他人がそうだとは思わない。 けど、私のこれは。 きっと、もういつか過ぎた日のことと同じ。 「…私は、甘えたくない。自分の甘えで、他人を…」 そこで私の頭にはある日のことが浮かぶ。 どうしてそうなったのか。 そんなことになったのか。 私に吐き捨てるように言った男の言葉が頭の奥で響く。 だけど違う、あれは私だけが甘えたんじゃない。 あれだけは、違う。 「?」 伯寧さんの言葉で私は我に返った。 そんなこと、どうだっていい。 「他人を、自分の甘えで傷つけたくない」 だから、あの男のためにそういうことにしておいてあげる。 私はあなたを許す、だけどあの時の私を、私は赦さない。 殆ど無意識に、自分の口から言葉が出る。 感じたままの言葉が出ていく。 「…それに、私は自分の甘えで一番尊敬していた人に迷惑をかけた。そんな気は全くなかったのに、周りの感じ方は違ったのね。だからもう、それと同じことをするなんてまっぴらごめんよ。甘えることが楽な道だと言うのなら、私は迷わず苦しい方を選ぶわ」 一息ついて、自分が何を話したのか理解する。 伯寧さんがまた、悲しそうな顔をしている。 私は今、どんな顔をしてるんだろう。 目を逸らした。 床に落ちる影がまた傾いている。 日がゆるやかに落ちていく。 その前に伯寧さんを返さないと。 日が落ちる度に気温が下がる。 この家から伯寧さんちは遠くもないけど、そんなに近くもない。 風邪をひいてしまったら悪いわ。 「…ごめんなさい…私が話をするところじゃなかったのに」 「どうして、君は…」 伯寧さんが私に言う。 それも何を言いたいのか分かる。 向こうで一度同じことを、その先を言われたことがある。 『。どうして一人で抱え込む?』 私はそのあとかけられた言葉に救われた気がして、そのまま甘えた。 だけど、あの時と同じ選択はしない。 その結果を見れば、どうして同じ選択が出来るだろう。 ――だから、選ばない。 それに、こうでもしておかないと。 「これが私。向こうにいてもここにいても変わらないわ。世界が変わっても、私の中の世界は変わらないの。だから、どこにいても同じ。何も変わらない」 「」 「することをする、したいことをする。ただ、それだけよ」 ごめん、伯寧さん。 気持ちは有り難いけど、私はそれを選べない。 こうでもしておかないと、私多分、自分の足で立っていられない。 分かってもらえなくていい、ただ放っておいて。 「…分かった。今は、もうこれ以上は言わない」 目を伏せて言った伯寧さんに、私はひとまず安心して、静かに息を吐き出した。 ふと顔を上げた。 僅かに室内へ入ってくる風が冷たい。 少し風が強くなってきた気がする。 そのとき、唐突に伯寧さんが言った。 「けど、一つ聞いてもいいかい?」 「はい」 「どんな夢を見たの?」 なぜそれを聞くんだろう。 「大していつもと変わらなかったけど…」 あまり思い出したくないけど、一つだけ思い出してもいい…思い出したい夢があった。 私はそれを思い出す。 懐かしい、ただ懐かしい思い出。 答えながら、私は目を閉じた。 目を閉じると、まるでそこにいた時みたいに感じる。 「一つだけ違う夢を見ました。懐かしい夢だった…縁側で小さいころに祖父に寝かしつけてもらった夢。その日の、春の日差しも香りも、そよぐ風も、全てが懐かしい…そんな時も、あった…」 「…ありがとう、話してくれて」 私は瞼を上げた。 笑みを浮かべている伯寧さんに、私は言った。 「私こそ、ありがとう。伯寧さんのおかげで、ほんの少しでも過去の幸せに浸れた、ありがとう」 もう一度だけ目を閉じた。 今は晩秋だけど、春の香りがそこにあるような気がする。 伯寧さんが言う。 「とりあえず、今日のところはこれで失礼するよ」 「はい。外、風が出てきたようなので身体に気をつけて下さい」 お互い、立ち上がりながら言う。 「」 呼ばれて顔を上げた。 次の瞬間、私は伯寧さんの腕の中にいた。 完全に油断してた。 「大丈夫。私はちゃんと傍にいるから、辛いと思うことをいつか誰かに話してもいいと思えたら、話してくれないかい?。いつでも傍にいるから」 そう言って、伯寧さんは私の頭を二回、撫でる。 それから静かに離れて、何事もなかったように内戸を開けて出て行った。 また、明日。 それだけ残して。 姿が見えなくなってから私はやっとさっきのことを理解できた。 床にそのまま腰を下ろす。 「良いも悪いも返答してないのに……それも寝言で言ったのかな…」 『じいちゃん、いいこ、いいこして』 誰もいないそこで、耳に熱さを感じながら誰にともなく私は答えた。 「考えておきます」 他にしたかったお説教は、一体なんだったんだろう。 それも答える人はいない。 その夜、私は今までと全く違う夢を見た。 正確に言えば、悪夢も見るけど、悪くはない夢も見るようになった。 悪くはない。 悪くはないけど…。 分かってはいたけど、自分も本当に単純だな、と目覚め一番に私は声を出して笑った。 ああ、可笑しい。 可笑しいけど、そんなことがあってもいいか、と自分の顔を私は片手で覆った――。 つづく⇒ ぼやき(反転してください) どんな夢を見たのかは、ご想像に置かませ致します あと、郭嘉の勝手な設定は勝手な設定です それから結局シリアスになる、それね さてどうしたものか 2018.05.19 ![]() |
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