いつも気づくと面倒事に巻き込まれてるのは自業自得なんでしょうか

私、なにかしてるんでしょうか

誰か私におしえて下さい







     人間万事塞翁馬 9















「は〜あ、私、何か気に障ることしたのかなー…」



私はついさっきといっても過言ではない出来事を思い出して、往来の隅でため息をついた。
今いる場所は、店が立ち並ぶ許昌の大通り。
簡易な幕を張った日用雑貨っぽいものを並べている店の横の、路地に入る手前だ。
服はこちらの服をお借りしている。
思い出したことというのは、さっき文則さんと話をした時のことだ。

朝食をいただいたあと、文則さんが帰宅したときいて、昨日のお礼と謝罪をしようと思ったのだ。
お礼はできたのだが、謝罪は出来なかった。
というのも、なんだか昨日までと打って変わって、避けられてる。
……いや、昨日までって言ったって、初めて会ってから3日も経ってないんだけど。
それでも、何か…空気感がそれまでと違った。
話しもそこそこに切り上げて、さっと目の前から去ってしまったのだ。
…疲れてたからかな、夜警明けだし。
と、思ってはみるものの、でも何か違う気がするのは、気のせいかな…。



「やっぱ、あれのせいかなー…」



昨日、手入れ具を返してもらった時に笑ったことを思い出した。

それこそ10代の頃は、よく”何を考えてるか分からない”と母に言われたものだ。
喜怒哀楽をちゃんと出せ、笑うことは特に肝心。
あんたは全然笑わないから、もうちょっとにこっとしなさい。
…って。

その時は、そんなもん、と思ったんだけど…20代入ったあたりから、たしかにそれ必要だな、と思い始めた。
同じタイプの同性と知り合った時に、コミュニケーションできねーって思ったんだよね。
強いてする必要もないか、と思ってたけど、でもやっぱ最低限は必要かなって。
それで、ああ私も他から見たらこうなのかなって思ったら、ちょっと感じ悪いな、って思って。
お互い気持ちいいのが一番だよね、って思ったんだ。

それで、今はなるべく笑うようにしているし、無理がない程度に喜怒哀楽出してる。
そうすれば、合わない人は勝手に向こうからいなくなるし、合う人とはそれなりに楽しい。
利用してやろうっていう人も寄り付きやすいけど、そこは自分がしっかりしていればいいだけの事。
失敗したら、その分”経験”で成長しやすいし、命さえあればまあ、いいかな…って。

何事も自分のためだと思ってやってるけど…流石にちょっとヘコむなあ。
笑って馬鹿にされたと勘違いされちゃったのかな…。
まあ、どっちにしろヘコむってことは、私、無意識に文則さんのこと、頼りにしちゃってるってことだよね、きっと。
ダメだなー。
もっとしっかりしなきゃな…。
まだ10代の頃の方が、その辺しっかりしてたかもしれないな…。
なんせ、あの頃は”2●歳ですか?”とか”社会人になって何年目ですか?”とか聞かれてたのに、最近は”高校生なのにしっかりしてますね”とか”お嬢ちゃんいくつ?しっかりしてるね”とか”え!?自分よりも年上だったんですか?”って何歳だと思ったんだよ、みたいなことが多いもんな…。
可笑しいな…鏡見ると、老けたんだけどな、これでも。
最近絶望し始めてるんだけどな…。
ていうか、三つ目に関しては、確実に見た目の話じゃなかったからな…。
なんでなんだ…。
落ち着きがないからか…!そうか…。
あーあ…何やってんだ…。
こんなことぐるぐる考えてたってしょうがないのに。



「私、いくつになったんだっけ…」

「それは私も気になるな、是非とも教えてくれるかい?」

「ひぃ」



いきなり声をかけられ、昨日に引き続き、これよ。
後ろを振り返ると、そこにはイケメンの郭嘉が。



「か、か、郭嘉…さん」

「うん、おはよう。こちらの格好もよく似合ってるね。ところで、朝から元気がないみたいだけど、お腹でも空いた?」

「そうですか?ありがとうございます。…でも、朝はもう頂いてます。お腹は空いてません」

「そう、なら何で元気がなかったのかな?」

「なんででしょうね」

「うん、なんでだろうね。ところで、はいくつになったのかな?」

「いくつになったんでしょうね、いくつだと思いますか?ていうか、いくつが理想ですか?私は」



そう聞き返すと、郭嘉さんは一瞬目を見開いて、その後笑った。



「何か変なこといいましたか?私」

「いや、普通女の子は歳を聞くと怒っちゃうのに、更にそんな切り返しされたのが初めてだったから、ははは、面白いね君は」

「私は今の郭嘉さん見てる方が面白いですよ。それに、年齢なんて嫌でも重ねるモノ。それに怒ったってしょうがないじゃないですか。重要なのはいくつ歳を重ねたのか、じゃなくて、重ねた歳の中でいくつのものを経験して体得したか、でしょう」

「ふーん、面白いことを言うね。そういう考え方嫌いじゃない」



言いながら、郭嘉さんに頭をぽんぽんされた。
…やめろ、その女慣れしてそうな、それを。
…見たまんまじゃねえか。
色んな意味で期待を裏切らないな…。



「さて、ここで立ち話をしたくて君に話しかけたんじゃないんだ、私は」

「じゃあ、何用でしょうか?」

「うん、ここだとちょっと人が多いから、違う所で話がしたい。ついてきてくれるかな?」

「いいですよ、暇ですし」

「君のそういう一言多い所が、私は好きだな。じゃ、いこうか」



…どっちがだよ。
通りを歩き始めた郭嘉さんの後ろを、私はついて歩く。
微妙に距離取っちゃうのはね、癖です。
パーソナルスペースが広いのよ、私。

うう…、歩幅広いな流石に…。
朝…多分八時ぐらい?かな…時計ないから分からないけど。
その割には、通りの往来は賑やかで、やっぱ電気がない分、朝も夜も早いんだな、とふと思う。
ていうか、あれだっけ、朝早く起きないとけしからん、ていうご時世だったっけ?

そんなことを思いつつ、郭嘉さんの背中を追いながら、きょろきょろ辺りを見回すとあることに気づいた。
…おねえさま方が、きゃーきゃーしてる。
ああ、原因は間違いなく、こいつだ。
やっぱ、人気あるのね、そこは現代と変わらないのね。
いや、往来でこうなるかって言ったら、多分なんないけど。

なんない…なんないかな…。
芸能人が顔隠さずに歩いてたらこうなるかな。
私そういうの興味ないからよく分かんないや…。
いや、でも、待てよ。
そんな憧れ人物と一緒に歩いてる私、危険じゃない?

自惚れんな、って思うかもしれないけどね。
私、こういう下らない理由で小さいころイジメにあったんだよね。
ほんと、シャレになんない。
私は興味ねえっつってんのに、聞く耳持たねえの。
ああ、やだやだ、そういうのはもう勘弁願いたい。
君子、危うきに近づかず。

君子じゃないけど、もう一歩、距離を取ろう…。
そう決めて、次に出す足の歩幅を狭くして一歩盗ん……だ筈だった。



「わっ」

「どうして離れちゃうの?折角一緒なんだから、並んで歩こう」



ちくしょー、なんで分かったんだ!
っていうか、なんなんだ!



「ちゃんとついていきますから、もう一歩ぐらい離れたっていいじゃないですか」



背中に手を回されて、一緒に歩いている…。
逃げられない…。



「ついてきてくれるのはいいけど、何も離れなくたっていいんじゃないかな。それとも一緒に歩くのは嫌かい?」

「ええ、怖いですね」



私は目を細めた。



「怖い?私が?」



本当に不思議そうな声でそんなことを言うので、私は郭嘉さんを見上げて言った。



「違います、あなたが怖いんじゃなくて、あなたと”並んで歩くこと”が怖いんです」

「それはどうして?」



相変わらず、さも不思議そうに言うので、私は周囲に視線を移しながら答える。



「あの、熱い視線を向けてくるお姉さま方、勿論気づいてらっしゃいますよね?」

「うん、いつものことだ」

「彼女たちにとって、あなたは”憧れの異性”なんですよ。しかも、あんなに大勢の。その”憧れの異性”と並んで歩くなんて、どんなひがみが生まれるか…例え考え過ぎって言われても、どんなに小さなひがみだろうとその対象になるような事、進んでしたくはないんです」

「へえ?」

「女のひがみほど怖いもんはないわ…」



いや、人であれば変わらないか、と私は半ば独り言のように小さく呟いた。
ほんの少しの間だけ無言で歩いたが、それでも数歩歩いたところで、郭嘉さんが言う。



「君子危うきに近づかず、ってところかな。やっぱり面白いね、は……”ここ”の人間じゃないからか、それは分からないけれど。そんなこと、普通は考えないと思うよ?」

「なんでですか?」

「うーん、少なくとも…あの子たちはね、競って私の横に並びたがるんだ。他の子に見せつけるために、ね」

「へー、優越感に浸りたいんですかね」

「かもね。だからすぐ、私のものになりたがる」

「ほほう、幸せなことですな」

は、幸せになりたいと思わないのかい?」

「…幸せはなりにいくものじゃないですもん。だから、なりたいとは思わない。いつもきっとそこにあるから、そこに気づかなきゃいけないものだと思う。だから、幸せには”なりたい”より、”気づきたい”かな。気づければ、自ずと”なれる”から」

「ふうん。…そこにね…そこ、っていうのはどこだろう」



郭嘉さんがそう言うので、私は立ち止まった。
不思議そうに、郭嘉さんが私を覗くように見る。



「ここと、ここ」



私は、自分の足元を人さし指で、次に自分の胸に拳をあてた。



「自分が今いる場所に、幸せってのはあるんだよ。どこかにあるんじゃないの。そこに気づかなきゃ、きっと本当に幸せになんて、なれない」



そう言うと、一拍おいて、郭嘉さんは笑い出した。
ふふん、私でも何言ってるんだろうとは思いますよ。
けどさ、そんな腹抱えて笑う?
みんな見てるよ、やだよー。



「ははははは、いいね、。私は益々、君に興味を持ったよ」

「大丈夫です、そういうのいいです、いらないです」

「じゃ、行こう」

「いや、聞いてますか?ていうか、さっきの話、理解できなかったんですか?並んで歩くの嫌だって。それに、私、道を知らないから並んで歩いたって、どう動けばいいか分からないんですけど」

「大丈夫、こうしてちゃんと必要な時には誘導するよ」



そう言って、郭嘉さんは何故か私の右手と手を繋いだ。
自分でもわかる、今すっごい眉間に皺が寄ってる。



「そんなに嫌かな?」

「嫌です、色んな意味で」

「それは困ったね。けど、何かあったら…いや、ある前にちゃんと私が守ってあげるから、平気だよ」



私はただ、郭嘉さんを、いや、この優男を横目で見た。
いっそ、呼び捨てにしてやりたい。
”さん”とか、敬称いらない。



「まるで苦虫を潰したような顔だね…そこまで露骨に拒否されると、流石に私も落ち込むな」



…落ち込んでそうじゃないよ、寧ろ、面白いって顔してるよ。
私は諦めて、なされるがまま、ただ道を歩く。
微妙に歩幅を合わせてくれている優男に、私は何故だかわからないが、悔しい、と思っていた。














つづく⇒



ぼやき(反転してください)


ヒロイン考えてそうで考えて無かったりするので、割と一貫性がありません。
どっちかっていったら、多分体育会系だと思います。


2018.03.12



←管理人にエサを与える。


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