は何を以って か?」





     
 罪深キヒト






















かかる声に、手を止めて振り向くは
水面に青空と蝋梅を映し、その上には蝋梅の黄色の花弁を乗せる。
そんな池の前で岩に腰掛け、手には筆と文字の連ねられた竹板。

曹操はそんな彼女に問いを掛ける。


は何を以って か?」

笑みを浮かべて歩み寄る。
もまた笑みを浮かべて答える。


「孟徳を以って とす」


さわる程度の風が二人の間を駆ける。
優しく駆けて、どこへなりと消えていく。





「孟徳以外の天下なんて、私には考えられないわ。だってそうでしょう、私の記憶は孟徳から始まってる、そう全て」


妖艶に微笑む彼女はそう言うと再び筆を動かし始めた。
未だ距離のある曹操が問う。

「何を書いている?」








「恋詩」













さらりと答えて、さらりと書き終える。
己の書いたその文に目を通す。

曹操が直ぐ後ろまで来て覗き込む。

「どんな?」


は曹操に見られまいと、くるりと身を翻しながら岩の上に立つ。
いつもより高くなる自分の目線。
曹操を上から覗き込む。


「駄目。孟徳への恋詩じゃないから」

曹操は見上げて口を尖らせる。




「心外だな。俺ではないのなら誰へだ?捕まえてきてやろう」

その言葉に、 は目を細め微笑む。

「そうね、捕まえられるのなら捕まえてみて。これは、罪深い”春”への恋詩」



そう言うと、手にしていた竹板を背後の池へ振り向かずに放り込む。
曹操の目の前で、それは青空に弧を描いて、そして青空に水音を立てて消えた。
青が歪む。
黄色も歪む。
歪んでやがて、元に戻る。






「こんなにも恋焦がれて、甘い甘い詩を奉げるのに見向きもせずに去ってしまう。そうして、きっとまた来年何食わぬ、同じ甘美で懐かしい香りを振りまいてやってくるんだわ」



紡がれる の言葉。
曹操はただ、そんな を見つめる。

「なんて罪深いヒト。あらゆる人の心を誘惑しておきながら、アナタは何のコタエも出さずに去ってしまう。こんなにも想いを告げているのに」











唐突に の体を曹操が引き寄せる。
曹操の両肩に が腕を回す。

青空の下に一つのヒト。



「ならば、そんなものは捨て置いて、俺の天下に今から行くか?」

微笑む曹操に は悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「あら、それはどちらかしら?」

その言葉に、曹操は案ずるな、と一言。
くるりと身を翻し池を背にする。
両の腕には抱えられた







「ちゃんと連れて行ってやる」

「嬉しいことね」






回廊へ向かって歩む一つのヒト。
風が黄色をさらって吹いて行く。

残されたのは人が居たという温もりと、一本の上質な筆。
そして、麗かな春の陽気、罪深き(ヒト)


















⇒おわり




 いい訳とか↓見ない方はスルー


蒼天曹操さま夢でした。
ちょっと、しっとり大人っぽくを・・・目指したわけでは御座いません←
指に任せたら、勝手に出来上がったブツですマテ
えーと、コメントのしようがありませんね(お前
ヒロイン設定とか?・・・いる人はこのページの一番下に反転で置いておきます(先に言った方が良かったですかね?
・・・有難う御座いました!!←




ここまで読んでくださり有難う御座いました。





反転ここから⇒簡単なヒロインの設定てことで。曹操の幼馴染で年下で参謀タイプです。頭の方で戦に参加。曹操とは恋仲ですよ。お姉様。男を立てるタイプ。以上。